
税理士には大学院で科目免除されるルートがあると聞きました。どんな制度なんでしょうか?

本試験5科目突破より楽な道のような気もしますが、デメリットや本当のコスパも知りたいです。
本記事で解決できる疑問
- 税理士の大学院免除制度の仕組み
- 免除できる科目と免除条件
- 大学院ルートのメリット・デメリット
- 必要な費用・期間・現実的なスケジュール
- 5科目全部受験ルートとの比較

こんにちは、複数の士業資格を保有する現役士業の「てん」です。大学院免除ルートは「賢い選択」になり得ますが、コストと時間のバランスが重要。実態を解説します。
結論を先にお伝えします。
大学院免除ルートは「会計2科目(簿財)合格+会計関連の修士論文」または「税法1科目合格+税法関連の修士論文」で残りの科目を免除できる制度。費用は150〜300万円かかりますが、本試験で5科目全部突破するより時間効率が良いケースがあります。
税理士の大学院免除制度とは
税理士法では、大学院で修士の学位を取得することで、税理士試験の一部科目を免除できる制度があります。
免除制度の基本ルール
📌 大学院免除の基本
- 会計に関する修士論文:会計学科目(簿財)から1科目免除
- 税法に関する修士論文:税法科目から2科目免除
- 免除には本試験での合格科目も必要:いきなり全免除はできない
標準的なルート
最も多い大学院ルートは以下のパターンです。
本試験で簿財2科目+税法1科目(法人税法or所得税法)合格→税法関連の大学院で修士取得→残り税法2科目を免除→税理士登録
このルートなら本試験は3科目で済みます。
免除できる科目の組み合わせ
免除パターンを整理します。
パターン1:会計大学院ルート(会計1科目免除)
- 本試験で簿記論または財務諸表論のいずれか1科目合格
- 会計に関する修士論文を提出
- もう1科目(簿記論または財務諸表論)を免除
- 税法は本試験で3科目合格が必要
パターン2:税法大学院ルート(税法2科目免除)
- 本試験で簿記論・財務諸表論を合格
- 本試験で税法1科目(法人税法等)を合格
- 税法に関する修士論文を提出
- 残り税法2科目を免除
パターン2が最も人気。本試験で簿財+税法1科目の3科目だけで税理士登録への道が開けます。
パターン3:会計+税法のダブル大学院(フル免除)
理論上は会計大学院で1科目免除、税法大学院で2科目免除、本試験で2科目合格で計5科目達成。
ただし大学院2回通学になり時間とコストが膨大なため、現実的な選択肢ではありません。
大学院ルートのメリット
メリット1:本試験の負担を大幅軽減
本試験5科目突破は平均5〜10年かかる長丁場。
大学院ルートなら本試験3科目(簿財+税法1)で済むため、本試験突破期間を2〜3年短縮できます。
メリット2:修士の学位が得られる
税理士資格に加えて「商学修士」「税法修士」などの学位が得られます。
大学講師・コンサルファームへの転身など、学位を活かしたキャリアパスが広がります。
メリット3:研究テーマで専門特化
修士論文のテーマが「相続税対策」「国際税務」「IT税務」など独自分野なら、独立後の専門特化に直結。
研究を通じて深い専門性を構築できます。
メリット4:人脈構築
大学院では指導教授・同窓生・他の士業受験生など、独自の人脈が構築できます。
独立後の顧客紹介・専門連携の重要なネットワークになります。
大学院ルートのデメリット
デメリット1:費用が150〜300万円
大学院の学費は国立で年70〜90万円、私立で年100〜180万円。
2年間で合計150〜360万円のコストになります。
デメリット2:時間がかかる
大学院は最低2年間の通学が必要。
働きながら通うのは負担大で、時間効率が必ずしも良いとは限りません。
デメリット3:修士論文の負担
修士論文は最低5万字程度の執筆が必要。
研究テーマの選定・先行研究調査・データ分析・執筆と、本試験以上に時間を要するケースも。
デメリット4:認定への審査がある
免除認定は国税庁の審査があり、必ずしも通る保証はありません。
論文テーマが税法に「直接関連」していない場合、不認定のリスクがあります。
⚠️ 大学院ルートの落とし穴
- 費用150〜300万円は通信講座の5〜10倍
- 修士論文執筆で1〜2年の時間ロス
- 免除認定の不確実性
- 働きながらだと負荷大
- 本試験合格者と比較した時の評価差
本試験5科目ルートとの比較
本試験全部受験ルートと大学院免除ルートを比較します。
| 項目 | 本試験5科目 | 大学院免除 |
|---|---|---|
| 取得期間 | 5〜10年 | 5〜7年 |
| 総費用 | 30〜80万円 | 150〜300万円 |
| 修士論文 | 不要 | 必須 |
| 修士の学位 | なし | あり |
| 業界評価 | 純粋税理士 | 「院免」と区別される場合あり |
| 実務知識 | 受験勉強で実務直結 | 研究中心で実務とのギャップあり |
業界での「院免」評価
業界では本試験5科目突破者を「純粋税理士」、大学院ルート取得者を「院免」と呼んで区別する慣行があります。
採用時に「院免」を避ける事務所も一部存在。これは大学院ルートの隠れたデメリットの一つです。

「院免」と純粋税理士で評価が違うんですね…これは考えてなかった。

実際には実力で評価されるので、過度に気にする必要はないです。ただ、独立開業時の「受験経験の蓄積」では本試験突破者の方が経験豊富、という側面は確かにあります。
大学院ルートが向く人
💡 大学院ルートが向く人
- 本試験5科目突破の自信が持てない
- 30代以降で「短期で確実に資格取得」を最優先
- 大学院の費用150〜300万円を出せる経済的余裕
- 大学講師等の学術的キャリアにも興味
- 研究を通じた専門特化を目指す
- 働きながら大学院に通える時間的余裕
大学院ルートが向かない人
⚠️ 本試験ルートを推奨
- コストを最小限に抑えたい
- 2年間の大学院通学が困難な生活環境
- 修士論文執筆に対する苦手意識が強い
- 実務経験を重視する事務所への就職を目指す
- 「純粋税理士」としての評価を重視
具体的な大学院ルート計画例
実際の大学院ルートでの取得計画を解説します。
📌 標準的な大学院ルート計画(5年)
- 1〜2年目:通信講座で簿財2科目合格
- 3年目:本試験で税法1科目(法人税法)合格
- 3〜5年目:税法大学院に通学(働きながらor退職して専業)
- 5年目:修士論文提出・免除認定取得
- 5〜6年目:税理士登録
このルートなら5〜6年で税理士登録が現実的。本試験5科目より2〜3年早い可能性があります。
大学院選びのポイント
ポイント1:税法または会計に強い大学院
税理士免除認定を受けるには、税法または会計に関する研究科である必要があります。
「商学研究科」「経済学研究科」「会計大学院」「税理士コース付き大学院」などが候補。
ポイント2:通学時間と費用
自宅・職場から通える範囲の大学院を選ぶ。
夜間・週末コースがある大学院なら、働きながら通学も可能です。
ポイント3:指導教授の専門
修士論文の指導教授が税法・会計の専門であることが重要。
免除認定実績のある大学院・教授を選ぶと安心です。
ポイント4:認定実績
過去に税理士免除認定を受けた修了生が多い大学院を選ぶ。
合格者ネットワークが構築されている大学院は、論文指導も充実している傾向。
大学院ルート合格者の体験談
体験談1:32歳会社員→税法大学院修了で税理士登録
「30歳で簿財2科目+法人税法合格後、税法大学院に2年通学。働きながらだったが、夜間コースを活用し修士論文も完成。33歳で税理士登録達成」
体験談2:28歳会計事務所勤務→大学院ルートで4年取得
「会計事務所勤務しながら大学院通学。指導教授が税務の専門家だったため、修士論文がそのまま実務知識にもつながった。28歳で税理士登録」
体験談3:35歳主婦→大学院ルート選択
「本試験5科目を働きながら突破は厳しいと判断し、大学院ルートに切り替え。費用200万円かかったが、35歳で取得できた」
大学院ルートのよくある質問
Q1. 大学院ルートで本試験合格者と評価差はありますか?
実力差ではなく「受験経験の量」の違いはあります。ただし実務では実力評価が中心なので、過度に気にする必要はありません。
Q2. どの大学院が税理士免除に強いですか?
明治大学・早稲田大学・東京経済大学・千葉商科大学などが認定実績豊富で人気です。
Q3. 修士論文のテーマはどう決めますか?
税法に関する具体的テーマを指導教授と相談の上決定。「タックスヘイブン税制」「相続税の納税猶予」「インボイス制度」など、最新論点が人気です。
Q4. 大学院費用は経費にできますか?
独立後の事業者なら可能性あり。会社員なら教育訓練給付金の対象になるか確認しましょう。
Q5. 30代後半・40代から大学院は遅いですか?
遅すぎることはありません。むしろ実務経験を持って大学院に通うことで、研究内容が深まる利点もあります。
結論:大学院ルートは「コスト>時間効率」と感じる人向け
🏆 ルート選択の最終判断
- 本試験5科目突破の自信あり+コスト最小化重視 → 本試験ルート
- 確実に取得したい+費用150〜300万円OK+大学院通学可 → 大学院ルート
- 迷ったらまず簿財合格:その後で判断できる
大学院免除ルートは「賢い選択」になり得ますが、誰にでも最適ではありません。
費用・時間・実務評価のトレードオフを慎重に検討した上で選びましょう。
どちらのルートでも、まずは簿財合格が出発点です。無料体験講義から最初の一歩を踏み出しましょう。
大学院ルートと通信講座の組み合わせ戦略
大学院ルートを選ぶ場合も、本試験対応の通信講座は必須です。
必須:本試験3科目の通信講座
大学院ルートでも本試験で簿財+税法1科目(計3科目)は突破する必要があります。
通信講座(スタディング・アガルート等)で効率的に進めるのが鉄則。
大学院通学中の学習サイクル例
- 平日:仕事+大学院通学(夜間)
- 週末:通信講座での税法学習+論文執筆
- 長期休暇:集中学習+論文ブラッシュアップ
働きながら大学院と通信講座のダブルタスクは負荷が大きいですが、効率を最大化する組み合わせです。
会計大学院(アカウンティングスクール)の特徴
会計大学院(アカウンティングスクール/専門職大学院)について詳しく解説します。
会計大学院の制度的特徴
会計大学院は公認会計士試験の短答式試験の一部免除も得られる特殊な大学院。
税理士試験では簿財1科目の免除に対応していますが、公認会計士志望者も多く通うため、税理士単独志望者には費用対効果がやや低い面もあります。
代表的な会計大学院
📌 代表的な会計大学院
- 青山学院大学大学院(会計プロフェッション研究科)
- 関西学院大学経営戦略研究科
- 慶應義塾大学院(経営管理研究科)
- 明治大学大学院(会計専門職研究科)
- 千葉商科大学大学院(会計ファイナンス研究科)
税法大学院の選び方詳細
税法大学院は税理士免除認定で最も人気のルート。具体的な選び方を解説します。
認定実績豊富な大学院
毎年多数の修了生が税理士免除認定を取得している大学院。
📌 認定実績豊富な税法大学院(例)
- 東京経済大学大学院(経済学研究科)
- 千葉商科大学大学院(政策研究科)
- 明治大学大学院(経営学研究科)
- 早稲田大学大学院(商学研究科)
- 関西学院大学大学院
これらの大学院は指導教授の論文指導ノウハウが蓄積されており、認定取得率が高めです。
夜間・週末コースの活用
働きながら通学を目指す場合、夜間・週末コースを設置している大学院を選びましょう。
東京経済大学・千葉商科大学などは社会人受験生向けのコース設計が充実しています。
修士論文の書き方とポイント
大学院ルート最大の関門である修士論文の書き方を解説します。
論文テーマの選定
免除認定を取得するには、論文テーマが「税法に直接関連する」必要があります。
「相続税の納税猶予制度の問題点」「インボイス制度導入後の中小企業への影響」など、具体的・現代的テーマが推奨されます。
論文構成の基本
📌 修士論文の標準構成
- 序論(問題の所在・先行研究レビュー)
- 第1章(制度の概要・歴史的背景)
- 第2章(現状分析・問題点の指摘)
- 第3章(具体的事例・データ分析)
- 第4章(解決策・提言)
- 結論
合計:5〜10万字
論文執筆のスケジュール
2年間の修士課程での標準的な論文執筆スケジュール。
- 1年目前期:テーマ選定・先行研究調査
- 1年目後期:第1章執筆・データ収集
- 2年目前期:第2〜3章執筆
- 2年目後期:第4章執筆・最終仕上げ・口頭試問

2年で5〜10万字の論文執筆は大変そうですね…

本試験の答練を毎月受けるより、長期的な論文執筆の方が継続しやすいと感じる人もいます。学習スタイルによる適性が大きいです。
免除認定後の手続き
修士論文を提出して大学院を修了したら、国税審議会への免除申請を行います。
申請手順
- 大学院修了証明書・成績証明書を取得
- 修士論文の写しを準備
- 国税審議会に研究認定申請書を提出
- 審査結果通知(通常1〜2ヶ月)
- 認定後、税理士登録申請
認定後の登録要件
免除認定取得+本試験合格科目+実務経験2年が揃って初めて税理士登録が可能。
修了後すぐに税理士として活動できるわけではなく、実務経験を積む期間も計画に織り込みましょう。
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